収益物件のご購入には、おおまかに9段階の流れがございます。全体像は以下のとおりです。

Step1.不動産投資の目的や、ご自身の現状を明確にする

収益物件初心者の方は通常物件サイトから検索して探します。
メディア等で物件投資が話題になっていたりすると、逸る気持ちを抑えきれなくなります。。
しかし、ただ漠然と物件を探しても、現金購入の方は思ったより資金が足りなかったり、融資の審査が上手くいかなかったりすることもありますし、又、将来的に想像と違ったと後悔されることも可能性としてあります。

不動産投資にも、例えば老後の年金として収益物件を所有相続税対策で収益物件を所有副業として不動産投資を大きくしていきたい、当面収益物件で収入を得て、最終的には売却したい、など、人それぞれ色々な目的が存在します。その目的を明確にしておかないと、目的に合わない物件をいくら見つけても時間の無駄になり、その間に目的に合った良い物件が売却済みになってしまうこともあります。
又、ご自身の現状とは、収益物件に使える自己資金や融資の限度額のことで、上記の目的同様、ご自身でいくらくらいまでの物件が買えるのかをある程度把握しておく方が物件選びをスムーズに進められます。

目的を明らかにし、現状を明確にすれば自然と購入する物件の基準がはっきりとしますので物件選びがスムーズとなります。

Step2.収益物件の情報を収集する

Step1で明確になった物件の条件を元に、収益物件サイトや不動産会社へコンタクトを取り、物件の情報を収集します。
不動産会社へご自身の希望条件を伝え、合う物件を探してもらったり、後日良い物件が出たときに紹介してもらうよう依頼するなどの方法もあります。
不動産会社には、実需(本人が住むなど、本人が使用する不動産など)に強い不動産会社もあれば、収益物件専門の不動産会社や、あらゆる種類の不動産のスペシャリストを複数抱える不動産会社など、バリエーションは色々ありますが、収益物件について知識を持ち、丁寧に疑問に答えてくれる不動産業者を選ぶようにしてください。

収益物件には、区分マンションや区分店舗、戸建てや一棟アパート、一棟マンション、一棟ビル、売りホテル、等、色々な種類があります。
ご自分にどのような物件が向いているかは色々調べているうちに見えてくることが多いです。又、収益物件に詳しい不動産会社へご自身の属性や不動産投資の目的など仰っていただくと、どのような物件が合うかアドバイスを受けることが出来ます。

Step3.物件に関する問い合わせ、資料請求をする


気になる物件が定まったら、不動産会社に問い合わせと、資料の請求をします。
メールや電話、対面などありますが、電話ですとその物件についての詳しい話を聞くことも可能ですので、電話での問い合わせをお勧めします。

請求する資料は、大まかに以下のようなものがあります。

A.物件概要書や物件写真
物件の価格、面積や想定・現況利回りなど、不動産の基本的な情報が分かります。


B.レントロール
賃貸状況が載っている書類です。空室状況、貸室の面積や賃料などが分かります。


C.修繕履歴
過去、その不動産の修繕やリニューアルなど、工事の履歴が分かります。


D.支出が分かる書類
固定資産税の税額や、管理コスト(管理会社があれば管理会社へ払っている金額、自主管理であればエレベータの管理コストや定期清掃のコスト)により、毎月いくら位のランニングコストがかかるかが分かります。


E.登記簿謄本
登記簿謄本により、所有者の情報や現在物件にどのくらいの金額の抵当権が設定されているか、や、差し押さえなどの問題点がないか、が分かります。

基本的には上記5点ですが、登記簿謄本に関しては一般的に理解することが難しく、これを読むことにより全てを理解可能なのは専門家のカテゴリとなります。又、所有者を知ることによりその物件に対する購入意欲が変わるわけでもありませんので、登記簿謄本の請求はその物件の購入の話がもっと前に進んでからでも良いでしょう。

上記資料により、満室想定表面利回りと満室想定実質利回り、現況利回りなどが分かってきます。
分かりやすく説明すると

満室想定年間家賃収入 ÷ 物件の購入価格 × 100 = 満室想定表面利回り
(満室想定年間家賃収入-年間の諸経費) ÷ (物件の購入価格+購入時の諸経費) × 100 = 満室想定実質利回り
(現況の月額家賃収入×12-年間の諸経費) ÷ (物件の購入価格+購入時の諸経費) × 100 = 現況利回り

ということです。

通常、テナントの入れ替わりは行われることが多いので、この現況利回りというのは参考にならないです。が、現状の稼働率のまま、新たなテナントがしばらくの間入らないという状況も視野に入れ、当分現状のままだとどの位の利回りなのか、の目安を頭に入れておくことは非常に重要です。

以上の資料により不動産の積算価格評価や、収益還元法での評価などを調べられます。金融機関はこれらを元にその物件への融資価格を判断したりしますが、この判断はその金融機関によって様々ですので、自身で一生懸命計算してもその通りに運ばないことが多いので、知りたいのであれば不動産業者へこの物件の積算はどの位かを聞くと教えてくれる場合もあります(聞いたところで金融機関の評価ではないのであまり参考にはなりません)。

利回りは不動産投資にとって重要な項目ですので、しっかりと把握してください。

Step4.現地調査、内見をする

様々な資料からご自身で深く興味を持つ物件が見つかったら、現地調査、内見をしましょう。
空室がある物件であれば、そお空室内の確認もするべきでしょう。
入居者がいる場合、その貸室の中を確認することは基本的に不可能です。
満室で内部が見られない場合でも、過去の空室募集資料などで写真が残っている場合もありますので不動産業者へ聞いてみるのも良いでしょう。

最近はGoogleストリートビューなどで近隣の様子をパソコンで見ることが出来ます。当然これも参考の一つになりますが、実際に現地に出向くことにより、時間帯別の人通りや、夜の明るさなどが把握できます。
場合によってはその物件の入居者であろう人を見ることが出来るかもしれません。空室があり、室内に入れるとしたら、室内の状況や設備状況が分かりますし、共用部を見ることにより全体の管理状況を把握することも出来ます。
しかし、物件によっては、購入検討のために内部に無断で立ち入ることを禁じている所有者も沢山おられます。これは入居者の安全、安心を考えて
のことですので、無断で内部に入ったり、物件入口付近に居続けることは避け、不動産会社へ内見希望と伝え、所有者から許可を取ることが必須です。

Step5.買付証明書を提出する

現地調査を終え、購入の意思が固まったら不動産会社へ買付証明書(買付申込書)を提出します。これを提出することにより、売主に購入意思を伝えることが出来ます。

買付申込書には物件の名称や所在、希望の購入額、支払方法(融資を使うか、現金か等)、有効期限などを記入し、買主の情報(氏名や住所)の記入と押印をします。
指値(値引き交渉)などがあれば、希望購入額にその金額を書き入れましょう。

満額での購入希望をしたからといって必ず購入できるとは限りません。
現金で即購入を希望する人が出たり、売主の事情が変わり売却そのものがなくなることも有り得ます。
又、この買付証明書には法的拘束力はありませんので、これを出した後に購入を辞退したからと言って原則として損害金は発生しません。

しかし、正当な理由なく買付証明の提出、キャンセルを繰り返した場合、不動産会社からの信頼を失うこともありますし、提出後に契約に向けて交渉が進み、正当な理由なく契約を拒否した場合は損害賠償請求をされる場合もありますので、ただ物件を押さえるだけという意味合いでの軽はずみな買付証明書の提出はするべきではありません。

Step6.金融機関に融資の申し込みをする

全額現金で買われる方もいらっしゃいますが、大抵は自己資金+融資で不動産投資を始められる方が多いです。

住宅ローンなどでお付き合いがある金融機関がある場合、担当者へご自身が不動産投資を始めたい旨を伝え、事前にどのくらいまで借りられるか目安を聞くことも出来ます。が、一般的には買付証明を出す前後で、金融機関へ出向き、仮審査を受けることとなります。その際に物件の資料を出来るだけ多く、ご自身の資料と併せて提出することになります。
金融機関により、審査基準は異なります。複数の金融機関に同時に審査依頼をすることは決しておかしいことではありません。

Step7.売買契約を締結する

金融機関の事前審査をクリアしたらいよいよ売買契約となります。

売買契約の前に、宅地建物取引士から重要事項説明を受けます。重要事項説明書には物件に関する事項や取引に関する事項が記載されています。重要事項説明書を読みながら、又、説明を受けながら、契約内容や物件の情報に今までと違う内容はないかを確認します。事前に重要事項説明書を入手し、事前に読み込んで疑問点をリストアップし、説明を受ける際に質問をすることが望ましいでしょう。同時に売買契約書も事前にコピーを入手し、内容をしっかり確認しておくことも良いでしょう。

問題がなければ正式な売買契約を締結します。一般的には売主、買主、仲介の不動産会社(複数の場合もあります)が顔を合わせて手続きを行い、契約書に記名押印し、手付金を支払います。

ここで大切なことは、融資を使っての購入の場合、融資特約を付けることです。期限内に融資が承認されなかった場合に白紙解約となり、手付金が無利息で返還される特約です。これが無いと、融資が承認されなかった場合、現金購入となり、それが無理な場合に手付金を放棄することになり、大きな損失が出ます。
事前審査で承認されても、本審査で承認されないこともありますので、融資特約は必ずつけるようにしてください。

Step8.金融機関に正式に融資を申し込み、金銭消費貸借契約を締結する

売買契約と同時に金融機関に正式な融資申し込みをして本審査を受けます。その際に契約書、重要事項説明書のコピーなど、金融機関から求められる資料を迅速に提出します(全て揃わないと本審査が進みません)。

融資の承認がおりましたら、金融機関と金銭消費貸借契約を締結します。契約後は融資の金額や期間は変えられませんので、申し込みの段階で希望を伝えておくべきでしょう。

Step9.残金決済、不動産登記、引き渡しを行う

最終段階となります。決済は契約時の決めた日に、売主、買主、仲介の不動産業者、司法書士や金融機関担当者などが出席します。
当日は不動産登記の準備として、必要書類を司法書士が確認をし、残金決済後にすぐ所有権の移転が可能かチェックをします。同様に、不動産に抵当権の設定がされているならばそれを抹消する書類が揃っているかも司法書士が確認します。確認が終わると融資担当者に融資実行を指示し融資を受け、残金を支払います。売主の指定口座へ振込することが一般的です。

決済では、残金(手付金を含む売買代金)、固定資産税清算金(売主がその年度の固定資産税を払うため、日割りで清算します)、登記費用、登記手数料、不動産仲介手数料、などを支払います。又、テナントがいる場合、日割りの賃料を清算する場合もあります(大抵は残金から日割りの賃料を差し引く形が多いです)。

売主が入金を確認したら、領収書を受け取り(契約によっては振込用紙を領収書とする場合もあります)、司法書士所有権の移転手続きをし、鍵や物件関連の書類などを受け取り、引き渡しが完了となります。

まとめ

以上が大まかな不動産購入の流れとなります。
やることは多いですが、基本的には不動産会社がサポートしてくれますし、自身で全部を準備するわけではありませんので安心してください。
不動産会社によってはサポートがいい加減であるところもあるようです。又、不動産会社はプロではありますが、ミスが100%無いとも言い切れません。ご自身で判断する必要がある部分もありますので、情報収集などをしっかりしておくことも必要です。当然ですが、不動産会社が信用出来るのかも大事ですので、質問にきちんと答えてくれるか、等、きちんと確認をすることをお勧めします。